とある書店で

本屋さんのカメラ雑誌コーナーをウロウロしていると「カメラに詳しいのですか?」と見知らぬおじさんに声を掛けられました。
いやいやそれほどでもありませんよと謙遜したのですが「見てもらいたい写真があるんですよ」とカバンをがさごそ。

撮影シーンに応じた設定や機材の選定であれば少しくらいは助言できますが、写真の良し悪しのお話だとしたらその人の主観・好みが1番大事だと思うので、ワタシからはなにも言えることはないなー、などと考えながら準備が整うのを待っていました。
そこでおじさんが取り出したコンデジの背面モニターに映し出されたのは、何処か室内の壁や天井を適当に撮影したような写真で、予想以上にコメントに困る内容。

なにを言ったものかと窮していると「動いているんだよ」とか「こっちには少し写っている」とか、ぶつぶつと要領を得ないことを言いながら、次々と同じような写真を見せてくるおじさん。
イヤな想像を働かせつつも、意を決して「これはなんですか?」と尋ねたところ、

「霊だよ!」

と、やや語気を強めて食い気味に答えが返ってきました。
まずい。なんてこった。あかん。どうしよう。やってもうた。物腰柔らかな話し方だったからさほど警戒していなかったけれど、関わってはいけない世界の住人だった。

その後のことはあまり覚えていませんが、おじさんが写真を指差して「オーブ」だと主張するものは、レンズに付いたゴミや空気中のホコリが写り込んだもので、「赤くなっているのは火事で亡くなった人が」と自説を展開した写真は、オートホワイトバランスが複雑な光源によって乱れた結果ではなかろうかと考えつつも、声には出さずにやり過ごした場面があったような気がします。

「一眼レフのような良いカメラだとかえって写らないんだよ」と嘆いていましたけれど、その理由は容易に想像できますよ。
特定のカメラでしか写らない現象に遭遇した場合は、それが写ってしまうカメラの方を疑いましょう。

おじさんはお坊さんにも相談したそうですが、霊なんていないと言われてしまったようです。
坊さんが霊を否定するなんてどういうことだと、おじさんは憤慨していましたけれど、そもそも仏教って霊魂の存在を認めていましたっけ。

輪廻転生を仏教の教えとしているか否かがその判断の分かれ目のような気がするのですが、勿論そうだという意見と、それは誤解だという意見があって、無宗教のワタシでは答えを持ち得ません。
などと、最終的には全然関係ないところに考えが及んだのでした。